日本遺産『鬼が仏になった里「くにさき」』で取り組んできた事業について振り返る一里塚(マイルストーン)として、2023年の事業成果、認定時に立てた地域活性化計画の達成度(6年目)などについてご報告いたします。
■過去のマイルストーン(関連リンク)
・日本遺産くにさきのマイルストーン(2018-2020)
・日本遺産くにさきのマイルストーン(2021)
・日本遺産くにさきのマイルストーン(2022)
2023年度の事業総括
2021年度から3年間は内閣府の地方創生推進交付金を活用し、更なる情報発信、収益・自走化に向けた取組を行いました。事業は「①組織・人材育成」「②調査研究」「③施設整備」「④情報発信・普及啓発」「⑤収益化・自走化」の5項目に分かれています。
また、2023年度単年度について、「日本遺産魅力増進事業」「日本遺産コンテンツ造成事業」の2つのモデル事業の公募に応募し採択されましたので、これらを活用して日本遺産事業全体のブラッシュアップを行いました(基盤的情報の編集、コンテンツ開発)。
2023年度は文化庁・地域活性化計画の6年間、内閣府・地域再生計画の3年間、それぞれの計画の最終年度。地域をフォローアップする組織の機能強化と自走化を目指し、多岐にわたる取組に改めて挑戦しました。
①組織・人材育成
日本遺産くにさきの取組の情報共有のため、計13回の担当者会議(オンラインを含む)を開催しました。また、組織内の作業分担・今後の予算等の課題を解決するための4課長会議や、次の3年間のアイディア出しの会議を行いました。
開発した旅行商品の売り手団体の見出しについては、TEJ2023@大阪にてマッチングを行った旅行会社からの視察を受け入れ、実際に販売を行うための視察ツアーを実施しています。また、地域内での販売については、組織機能面で苦心をしておりましたが、様々な体験・旅行が販売できるような協業できるパートナーを探し出しました。
ガイド育成にも引き続き取組を継続し、視察ツアーを円滑に実施できるように、プロジェクト会議を実施したり、マニュアルの整備を行いました。
②調査研究
豊後高田市教育委員会、国東市教育委員会では、国東半島の文化財をよりブラッシュアップするための調査を実施しています。
2023年度には、豊後高田市教育委員会は7月に「夕日岩屋・朝日岩屋名勝調査報告書」を刊行し、同内容を基礎に意見具申を行い、2月に夕日岩屋・朝日岩屋がそれぞれ国の登録記念物(名勝地関係)となりました。
また、2022年度から豊後高田市教育委員会が策定していた『名勝天念寺耶馬及び無動寺耶馬保存活用計画』が年度末に完成し、当該文化財の保存活用の方針が立てられました。
日本遺産魅力増進事業・日本遺産コンテンツ造成事業の2事業については、日本遺産に関する文化財活用方法の事例集としてまとめるため、実施報告書を作成し、文化庁に提出しました。
【関連リンク】夕日岩屋・朝日岩屋が、国の登録名勝に登録されました!
【関連リンク】名勝・天念寺耶馬及び無動寺耶馬の保存活用計画を刊行しました!
朝日岩屋(国登録名勝)
夕日岩屋(国登録名勝)
名勝 天念寺耶馬及び無動寺耶馬保存活用計画
③施設整備
国東市では、1月に岩戸寺の修正鬼会について学ぶ施設がオープンしました。
豊後高田市では、4月に真玉海岸の観光施設として、恋叶ゆうひ♡テラスを開業し、展望施設やレストランなどがリニューアルしました。日本遺産くにさきでも、フォローアップとしてメニュー開発を行いました(詳細は⑤)。
インバウンド対応として、日本遺産くにさきの主要な構成文化財に設置してある多言語解説の機材「jaj.jp」において、課題となっていた国東半島全体の世界観や、日本での旅の仕方についてもまとめた新コンテンツを追加しました(日・英・仏・中・韓)。
恋叶ゆうひテラス
Wi-Fiを用いた多言語解説ソフトイメージ
④情報発信・普及啓発
JRデスティネーションキャンペーンをにらんでWebメディアを使った情報発信を実施しました。メディア企画の中で、アウトドアブランドとのタイアップを行い、日本遺産くにさきのロゴ入りのシェラカップ・ナルゲンボトルの制作を行いました。
また、国内向け・インバウンド向けにそれぞれインフルエンサー等を招聘したファムトリップを実施しました。国内向けにはファン層ターゲットを絞ったインフルエンサーとして神社ソムリエの佐々木優太氏、仏像オタクニストのSALLiA氏、宿泊系コンテンツで発信力の高いこやトラベル氏を招聘し、YouTubeに動画をアップしていただきました。インバウンド向けには、シンガポール出身のインフルエンサー・チージー氏を招聘し、Instagramにリール動画を中心に発信をしていただきました。
更に、リトリートツーリズムのPRを行うための動画制作、プログラムにフォーカスを当てた宣材写真を撮影しました。
Webでの情報発信に関しては、コアコンテンツ(ストーリーブック・真玉珠音Project)の見せ方を工夫するホームページ改修を行いました。また、豊後高田市・国東市・由布市の有志で結成した真玉珠音Projectの動画制作がスタートしました。視聴者層は、狙い通り10~30代が中心となっており、若者に訴求するコンテンツとして、今後も動画制作等に継続して取り組みます。
普及啓発に関しては、日本遺産に関する文化財講座(学生対象:5回/一般対象:6回)を開催しました。また、引き続き別府大学での講義でも、日本遺産について取り扱わせていただきました。
【関連リンク】アウトドアブランドとのタイアップのまとめ
【関連リンク】国内ファムトリップのまとめ
【関連リンク】旅行・体験プログラムの動画を作成しました
【関連リンク】真玉珠音Projectのページ
ランドネ連携記事のKV
デビューを果たした真玉珠音
インフルエンサーのファムトリップKV
制作した動画イメージ
⑤収益化・自走化
観光事業化のためのプログラム開発を実施しました。前年に引き続きリトリートツーリズムの開発と、アフタートレイルと称してロングトレイルの前後で実施できる体験プログラムのリスト化・開発を行いました。
リトリートツーリズムに関しては、ナビゲーターとのコミュニケーションツールとして、栞型の一筆箋を開発したり、食事メニュー面でのフォローアップをシェフにいいただきました。
2023年度も、「A鬼の幸(地元特産品)の開発・販売」と、「B文化財グッズの開発・販売」、「Cクラウドファンディングの運営」に重点的に取り組みました。
■赤鬼ケジャン、黒鬼ケジャン(製造フロー支援)
■くにさきクラフトジン(デザイン制作・醸造フロー支援の一部)
■鬼のめざまし味噌、穂紫蘇の生ふりかけ、生姜の佃煮(レシピ開発・デザイン開発)
■牡蠣飯、蛸飯、ガザミ飯の素(レシピ開発・デザイン開発)
■韃靼そばプリン(レシピ開発)
■マテ貝クラムチャウダー(レシピ開発・フロー支援)
■真玉海岸ティラミス(レシピ開発・フロー支援)
■豊後高田の人形焼き(デザイン開発・金型作成支援)
また、2022年度に開発を行った「田染の夕 窓の月」「鬼の郷の実山椒とかぼすの生七味」、2023年度に開発を行った「鬼のめざまし味噌」については、それぞれ実販売をスタートさせました。
「B文化財グッズの開発」では、てんてんのぬいぐるみの購入者から要望があった、ねんねんのぬいぐるみを制作しました。製作費の一部はクラウドファンディングの資金を充てさせていただきました。
「Cクラウドファンディングの運営」については、新規案件はなく、天念寺修正鬼会のクラウドファンディングのみにとどまりました(同案件では、過去最高の寄附額となりました)。
鬼の郷の実山椒とかぼすの生七味
鬼のめざまし味噌
ねんねんのぬいぐるみ(右)
ゆうひテラスへの料理指導風景
ゆうひティラミス 試作
⑥九州沖縄連携のスタートアップ
日本遺産魅力増進事業を活用し、九州沖縄連携の再始動に取り組みました。メインビジュアル等の制作や、豊後高田市コスモスホールでのキックオフシンポジウムの実施、沖縄県・宮崎県での催事を行いました。また、2度のリモート会議やアンケートの実施により、予算確保のルール作りについて検討を行いました。
九州沖縄連携KV(小林大助氏デザイン)
キックオフシンポジウム
沖縄催事の様子(プラザハウス)
宮崎催事の様子(アミュひろば)
総会資料(実績部分)
日本遺産魅力増進事業・日本遺産を活用したコンテンツ造成事業の事業レポート
上記報告書は、まだ一般に公開されておりません。
文化庁のホームページにて公開された後に、ここにもリンクを貼り付ける予定です。
定量的成果と課題
①入込客数
六郷満山寺院の入込客数を指標として計測しています。2023年度はコロナ禍の影響も徐々に少なくなってきたので、イベント・広報の取組が徐々に再開されました。しかし、まだ観光客数が戻っておらず、誘客に関する取組を強化する必要があります。
◆六郷満山寺院(富貴寺・真木大堂・熊野磨崖仏・長安寺・天念寺・両子寺・文殊仙寺・瑠璃光寺の合計)
〔目標〕2023年:309,400 人
〔2017 基準値〕 238,000 人
〔2018 実績値 (目標値)〕 316,232 人(249,900人)〔前年比 +32.8%〕
〔2019 実績値 (目標値)〕 241,575 人(261,800人)〔前年比 -23.7%〕
〔2020 実績値 (目標値)〕 164,506 人(274,900人)〔前年比 -31.9%〕
〔2021 実績値 (目標値)〕 142,651 人(288,600人)〔前年比 -13.3%〕
〔2022 実績値 (目標値)〕 191,027 人(303,000人)〔前年比 +33.9%〕
〔2023 実績値 (目標値)〕 204,291 人 (309,400人)〔前年比 +6.9%〕
◆鬼会の里歴史資料館
〔目標〕2023年:5,000 人
〔2017 基準値〕 2,200 人
〔2018 実績値 (目標値)〕7,076 人(2,500人)〔前年比 +221.6%〕
〔2019 実績値 (目標値)〕8,171 人(3,000人)〔前年比 +15.4%〕
〔2020 実績値 (目標値)〕3,153 人(3,500人)〔前年比 -61.4%〕
〔2021 実績値 (目標値)〕3,223 人(4,000人)〔前年比 +2.2%〕
〔2022 実績値 (目標値)〕3,920 人(4,500人)〔前年比 +21.6%〕
〔2023 実績値 (目標値)〕5,129 人(5,000人)〔前年比 +30.8%〕
②ホームページの閲覧数等
日本遺産特設ホームページやSNSの更新を継続実施しています。2023年度は、YouTubeチャンネル「真玉珠音Project」を開設し、新たな発信を行っています。
◆特設ホームページ(ONIE.JP)の閲覧数
〔目標値〕2023年度 150,000view 〔当初の目標〕2023年度:30,000viewを維持
〔2018 実績値(目標値)〕 9,842view(3,000 PV) ※2 /8~
〔2019 実績値(目標値)〕 43,304view(30,000 PV)
〔2020 実績値(目標値)〕 68,553view(30,000PV) 〔前年比 +58.3%〕
〔2021 実績値(目標値)〕 67,810view(80,000PV) 〔前年比 -1.1%〕
〔2022 実績値(目標値)〕 81,707view(115,000PV) 〔前年比 +20.4%〕
〔2023 実績値(目標値)〕 99,497view(150,000PV) 〔前年比 +21.8%〕
◆公式SNS(Facebook+X(公式&真玉珠音)+Instagram+YouTube(真玉珠音))のファン数
〔2018 実績値〕330+9+0=339FANs
〔2019 実績値〕627+51+253=931FANs
〔2020 実績値〕815+125+405=1,345FANs
〔2021 実績値〕983+199+532=1,714FANs
〔2022 実績値〕1049+375+588=2,012FANs
〔2023 実績値〕1144+1,011+674+139=2,968FANs
③協議会の収入
日本遺産の取組は、その一部を収益化して、自走的な取組を推進することが必要とされています。
2023年度は鬼の幸・文化財グッズの開発・販売を、推進してきました。前年度との違いは、いくつかの鬼の幸(厳選特産品)が完成し実販売に移ったことで扱う商品の種類が増えました。今後は一層の新しい販路開拓等が重要になってきます。
協議会の収入額自体は過去最多となりましたが、新KPIの達成には至りませんでした。文化庁の最終KPI(2023)の数字は既に大きく突破しました。
◆日本遺産くにさきの収入
〔目標値〕2023年度:6,000,000円 〔当初の目標〕2023年度:1,580,000円
〔2018 実績値(目標値)〕0円(900,000円)
〔2019 実績値(目標値)〕約950,000円(990,000円)
〔2020 実績値(目標値)〕約1,200,000円(1,090,000円)〔前年比 +26.3%〕
〔2021 実績値(目標値)〕約1,470,000円(2,200,000円)〔前年比 +22.5%〕
〔2022 実績値(目標値)〕約2,440,000円(3,700,000円)〔前年比 +66.6%〕
〔2023 実績値(目標値)〕約5,337,000円(6,000,000円)〔前年比 +118.7%〕
◆国東半島リトリートツーリズムや教育旅行の体験プログラム購入者数
〔目標値〕2023年:500人/年
〔2020 実績値〕0人/年
〔2021 実績値(目標値)〕123人/年(50人/年)
〔2022 実績値(目標値)〕304人/年(200人/年)〔前年比 +147.2%〕
〔2023 実績値(目標値)〕358人/年(500人/年)〔前年比 +17.8%〕
認定継続審査と新しい地域活性化計画(令和6-8年度)
日本遺産くにさきは、認定から6年間を迎えましたので、認定継続審査を受けました。結果につきましては、例年であれば夏季に公表されます。
また、審査に先立ちまして、今後3年間の「地域活性化計画」を再度作成しました。審査結果公表後に日本遺産ポータルサイトにて公開される予定となっておりますが、審査終了後にこちらでも公開いたします。