『 "鬼の幸"開発してみた! 』シリーズについて
国東半島は、六郷満山1300年の歴史と、海と山に囲まれた美しい景観が自慢の半島です。国東半島でとれる様々な特産品の中には、本当に良い素材となるものが多数あり、日本遺産の事業ではそれらを使った特産品を開発する事業に取り組んでいます。
【過去の記事はコチラ】 PRODUCT1:鬼の郷のしあわせもちもちそば粉ガレット
PRODUCT2:国東半島うに醤油・マテ貝醤油
香りの良い海の幸を使いたい!
「国東半島らしい食材」で、「香りが良いもの」という所から思考を巡らせる所から着想を得た国東半島醤油プロジェクト。その中でも、海の幸を使ったお土産品・加工品があまりない事に着目し、令和2年度には海の食材を使った商品開発を目指した取組をスタートしていました。
実は令和2年12月に公開した「泊まってみた!くにさき半島(海浜旅館しおじ編)」を見ていただくと、この頃には既に食材探しに動き出していたことが分かります。
地域等への取材で「うに」を使用した醤油を作りたいという部分までは固まっていったのですが、現地を訪れたシェフからは「マテ貝醤油」を推され、開発したいメニューに加えました。美しい真玉海岸で獲れる海の幸がマテ貝(馬刀貝)。北米やスペインなどの地中海の国々ではメジャーな貝ですが、日本では瀬戸内海などの静かな干潟にしか生息しないため、高級食材として知られています。
富来浦の「うに」(国東市)
真玉海岸の「マテ貝」(豊後高田市)
大分うにファームでの視察風景
獲れたうにをさばく様子
安永醸造にある醸造所での視察
プロジェクトチーム結成
令和3年7月、プロジェクトチームを結成しました。
国東市富来浦でうにを畜養している大分うにファームの栗林正秀さん・清末拓真さんにはうにの加工(塩揉みなど)を、マテ貝が豊富に獲れる真玉海岸でそばCAFEゆうひを経営していた松崎敏行さんにはマテ貝の調達を、国東市武蔵町で130年の歴史を持つ老舗・安永醸造に醤油加工品の製造を担当していただきました。
レシピ開発及び調理フローの指導は、フードコーディネーターの弘蔵周子先生に依頼し、うに・マテ貝が持つ味や旨味を存分に感じられる商品に仕上げたのは勿論のこと、安全に商品が製造できるように様々な部分でフォローをいただきました。
パッケージデザインは安永醸造さんの新しい醤油・味噌のパッケージも手掛けているDesign totte(大分市)の越田剛史さんに依頼をし、他の商品と調和しつつ、お土産品として手に取っていただけるデザインを追求していただきました。
フードコーディネーター・弘蔵周子先生との協議(大分うにファームにて)
プロジェクト会議の様子
海を護るというコンセプト
プロジェクト会議では、うにとマテ貝の2つの醤油が海の素材であることや、それらを利用し続けることが海を豊かな状態に保つ事に繋がっていることをアピールしたいという事になりました。
大分うにファームの畜養うには、元々はうにによる「磯焼け(うにが海藻を食い荒らし、魚の棲み処を奪っている状態)」を防ぐことを目的としており、事業を続けることが周辺の海を豊かに保つことに繋がります。エサは昆布の端材を主原料にしており、ホルモンや抗生物質・保存料は使用しないことで、天然のウニにも引けと取らない高品質のウニを畜養しており、「豊後の磯守」というブランドにもなっています。
一方の真玉海岸のマテ貝の採取は、真玉海岸の干潟の維持に役立っています。干潟はしっかりと空気を含むことで、沢山の貝やカニなどの動物が住める豊かな干潟になります。その為にもマテ貝掘りで干潟を程よく掘り返すことは、干潟の維持にとって重要なのです。
また、このプロジェクトで国東半島の魅力を多くの人に知ってもらうことで、地域を盛り上げ、次世代に引き継いでいくことにも繋がっていると考えています。
美味しい醤油を作ることが、豊かな里海をつないでいくことに繋がっているというのも、本プロジェクトの魅力となりました。
マテ貝・うにを安永醸造の醤油とあわせる
美しい海で獲れる食材を使った醤油の開発には、フードコーディネーターの弘蔵周子様にご協力いただきました。「国東半島で獲れる物・作る物を使用しているので、産地ならではの食材の良さを活かした醤油を作れる」とプロジェクトをここまで引っ張ってくださいました。
また、今回醤油をつくるのは国東市武蔵町古市にある創業130年の老舗「安永醸造」。社長の西百恵さんの、地域の食材を使用し、添加物をなるべく使用しない優しい製品は多くの人から支持をされています。伝統的な製法によって味噌・醤油づくりに取り組み、かぼす果汁やおかず味噌などの加工品も手掛けています。
マテ貝醤油の方にはマテ貝を蒸した出汁を、うに醤油の方には塩で揉んだウニの身を、それぞれの海からいただき、醤油と混ぜ合わせます。
マテ貝醤油にはしっかりとマテ貝の旨味が伝わっており、かつ、エグみの少なく上品な味わいに、うに醤油も濃厚なウニの味と香りがして、すごく高級感がある仕上がりになっていました。
どちらも「海と醤油の産地が近くて、加工にも添加物をなるべく使用していない」ことが、国東半島の海の幸の香りをそのまま伝えてくれていると感じました。マテ貝醤油・うに醤油を通して、多くの人に国東半島の海の魅力も伝えられる、とっても美味しい醤油ができたと思っています。
パッケージについて
今回、国東半島マテ貝醤油・うに醤油は、パッケージにもこだわりました。
真玉海岸に現れる縞模様の干潟に夕陽が沈むイメージのマテ貝醤油、逆に富来浦に朝陽が昇るイメージとなっているうに醤油と、対のデザインとなっています。この醤油が、美しいくにさきの海を知るキッカケにもなってくれたらと願いを込めています。
「真玉海岸のマテ貝使用」「国東畜養うに使用」の落款のイメージは、大分県産の海の幸を使用しているという証でもあります。